TMSAタイ・ミッション団: METALEX BANGKOK 2024 ハイライト

TMSAタイ・ミッション団 ハイライト 2024年11月 

事業革新パートナーズは、(一社)東京都金属プレス工業会(TMSA)が東京都並びに東京都中小企業団体中央会より委託を受けて実施している「デジタル技術を活用した販売力強化プロジェクト」に参画しています。海外研修事業として、2024年11月、ASEAN最大級の工作機械・金属加工関連展示会METALEX BANGKOK 2024(タイ・バンコク開催)に、取材クルーを派遣し、情報収集及び情報発信を行いました。

 

  • ■ METALEX BANGKOK 2024 展示会 視察

毎年タイやベトナムで開催されるMETALEX展は、国内外から52カ国・地域の企業が出展し、4日間で10万人が来場した。来場者はコロナ禍収束後の2022年から右肩上がりに伸びているという。出展社数の上位5カ国・地域は、中国(253社)、日本(175社)、タイ(151社)、台湾(99社)、ドイツ(96社)。中国からの出展社数(前回は213社)は増加しているが、これは中国地方自治体からの補助金などの後押しで出展したとみられ、タイ法人のない中国企業が小規模ブースで多数出展したという状況。米中貿易摩擦の影響もあり、印象としては中国の勢いは弱まっているようだった。

 

日本からは、アマダ、アイダ、コマツ、山善、ミツトヨ、FANUC、岡谷鋼機など常連ブースが並ぶほか、茨城県、東京都、長野県、京都府が自治体ブースを設置し、各自治体の企業の出展支援を行っていた。またJETROブースでは、本会会員である河政工業株式会社(KAWAMASA INDUSTRY CO., LTD.)が単独出展していた。

 

特設ブースの「Japan Innovators」では、タイ国内製造業のデジタル化・省人化ニーズの取り込みを狙い、先進的な製品やソリューションを提供する日系3社が出展。マニュアルの映像化・共有システムを提供する株式会社スタディストは、人工知能(AI)を活用したシステムにより、属人化しがちな業務知識を可視化し、社員の退職によるナレッジの損失などを防ぐ。そのほか、図面データ活用クラウドにより、図面と関連データをセットにして管理することで業務を効率化するキャディ、クラウド録画サービスにより産業現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を図るセーフィーが出展していた。

 

 会場内を見て回るだけでなく、本会はタイ国との交流の扉を開くため、日刊工業新聞社ブースに「グローバルポータル基地局」を設置させていただき、来場者に対して積極的にTMSAの宣伝を行った。壁にはTMSA新聞とポスター2点、さらに、「日系企業・団体ガイドブック」の中にTMSA紹介文をタイ語で掲載。4日間でTMSA新聞を50部、ガイドブックを1,000部近く配布することができた。

 

 

  • ■METALEX BANGKOK主催者インタビュー(RX Tradex社代表Veraporn Dhamcharee氏)抜粋

 

Q1) 展示会のスローガンである「You are the masterpiece」 とはどういう意味ですか?

“傑作(masterpiece)”はすべてのものの中で一番という意味です。素晴らしいイノベーション、機械、製品を持つ出展者が多数いらっしゃいますので、私たちはそれぞれの出展者が持つ“傑作”にスポットを当てたいと考えています。METALEX は、タイだけでなく、アジア、さらには世界の最新のイノベーションを紹介するプラットフォームであると伝えたいのです。

Q2) 日本の展示会の場合、来場者の主な目的は最新トレンド情報収集ですが、欧米の展示会は商談目的のために来場する人が多です。METALEXはどういうタイプの展示会でしょうか?

METALEX の主な目的は、ビジネスが取引を行うための適切なプラットフォームを確保することです。そのため、私たちは仲介役として、展示会場の出展者である売り手に対し、ふさわしいバイヤーをマッチングします。これが第一の目的です。第二の目的は、展示です。訪問者の多くは、イノベーションに関する知識を更新するためだけに来場し、技術や機械、ロボットがどのように進化してきたかを学ぶことができます。

 

 

  • ■タイ・サブコン協会会長インタビュー(Chanin Khaochan氏)

 

Q1) タイのビジネス概況とサブコン協会について教えて下さい。

部品メーカーの発展を支えるタイサブコン(タイ下請け振興協会)は、会員企業が国内外の様々な機関から認められるよう技術力の強化を図るとともに、新たな産業市場を開拓し、会員企業が最新技術を備えたメーカーになるための基準作りを行っています。会員企業は約500社です。

 今年は会員企業にとって厳しい年でした。とくにタイの自動車産業は40~50%生産が落ち込み、連動して部品業界の受注も40~50%落ち込みました。当協会としては、会員が自動車産業に依存することのないよう、他の業界への移行を促しています。特に電子産業は成長が見込まれています。

 

Q)下請取引について。公正な取引がなされていますか?

公正かどうかは別として、取引先と常に交渉はしています。価格競争については、中国製が圧倒的に安く、我々も努力して取引先の要求に応えられるようにしなければなりません。ただ単に価格を下げることはできないので、自動化システムへの投資を行い、生産効率を上げることで、最終的に競争できる価格を達成しようと努力しています。

 

Q3)会員企業は、取引先の金型を保管させられていますか?

はい、取引先の金型保管コストが生じているので、コスト負担について取引先と協議しています。タイ政府はまだ、日本のように「下請取引適正化」は課題として取り上げていないため、今は、民間企業同士で協議する段階です。

 

  • ■METALEXのデジタルマーケティング

日本では、LINEYou TubeX(Twitter)の順に利用率が高いが、タイの場合はFacebook, Tiktok, You Tubeと、デジタルマーケティングを行う上で優先する媒体が日本と異なる。事実、METALEXでもFacebookを使った宣伝が派手に行われており、専属のインタビューアーが毎日小間を取材し、その様子はLIVE配信されていた。

※タイSNS事情より https://www.thedigitalx.net/blog/thailand-sns

 

 

  • ■JETRO Bangkokセンター訪問

 TMSAミッション団には初めて海外出張される方もいらっしゃるので、訪問国の「一般経済事情とビジネス慣習」を学ぶため、インドに次いで今回もJETROの海外ブリーフィングサービスを利用した。タイの一般情報から、政治・経済、投資環境まで、細かくご教示いただいた。

タイへの日系企業の進出数は、5,856社で、中国、アメリカに次いで第3位である。2021年時点で、3年前と比較し412社増えており、そのうちの367社が非製造業であるという。今、タイは2016年に策定された「タイランド4.0」において産業の高度化、高付加価値化を図り、環境と社会の不均衡に対処すべく次世代自動車、スマートエレクトロニクス、農業・バイオテクノロジーなどに投資拡大を図り、持続可能な経済成長の実現を目指している。

 

  • ■S.P. Metal Part社 訪問

 バンコクから南東へ車で約1時間のサムットプラカーン県に位置するS.P. Metal PartSPM)社は、2012年に設立したS.P. AutomotiveSPA)と共に、日産や三菱向けに自動車業界向けの板金・プレス・溶接・組立部品を製造するのみならず、最近では電動ベッドなど、医療用部品にも参入している。

 コロナ禍では売り上げが落ち込み、100人を解雇せざるを得ないという厳しい時期を「じっくり学ぶ時期」と前向きに捉え、社内の自動化をすべて自前で行い、生産時間を45分から15分に短縮。まもなく10分を切るレベルまで進化しているという。

 工場の各所にモニターが置いてあり、従業員は生産性を確認しながら作業を行う。タイは高齢化社会に入りつつあり、国内に人材不足が不足していることから近隣諸国の力を頼っている。そのためには、言語上のバリアフリー化が必要だが、SPM社の生産システムは即座に従業員の国籍に合わせた言語で表示されるため、誰でも同じように作業を進められる。同社が目指すモニターのイメージは、「空港の入国審査の表示」だという。

 

  • ■まとめ

 インターネットやSNSのおかげで海外情報が簡単に入手できるようになり、かつてのような団体での海外視察は少なくなった。だからこそ、このようなTMSAミッション団の機会は貴重であり学びの価値は高いと言える。

 このレポートのように、皆様には視察内容を文字で伝えることもできるが、TMSAコネクテッドでは、音と映像で7名の団員の体験を共有できる動画コンテンツも備えている。また、タイを専門とする「海外特派員」からの情報も併せて読むことができる。

 

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