「生きているうちに、下請取引条件改善の話ができるとは思ってもみなかった」
あるTier2・金属プレスメーカー社長が感慨深げに語ったこの言葉が、私の心に深く刺さった。
下請取引条件改善に関する現状はというと、2016年9月にいわゆる”世耕プラン”が発表されて以来、追い風が吹いている。2017年1月の施政方針演説では、安倍総理は下請代金支払について50年ぶりに通達見直しについて言及。その後、政府・業界団体が一体となり、自動車・素形材産業を含む17産業において、ガイドライン改訂・自主行動計画策定等、下請適正取引推進に向けた動きは加速し、個々の企業にもこの流れは波及しつつある。
それにしても「生きているうちに・・・」とは、重みのある言葉である。
弊社は2017年12月~2018年2月にかけて、(一社)東京都金属プレス工業会の「(下請適正取引推進のための)TMSAアクションプラン」策定活動を行い、”現場の声”を直接聞くことができた。「申請書が通れば型返却・廃棄が可能となった」「見積書の一部に金型保管費のような欄ができた」など、予想以上の事態の前進に安堵する会社もあったが、現場の多くは依然として変化のない状況に業を煮やしている、というのが現実である。「創業以来50年分の金型が溜まっている」「補給品も量産時の単価が適用される」「低減要請を受けないと仕事が止まると言われる」など、悲鳴とも言える声も多く上がった。
なるほど、昨今の下請適正取引への動きは「歴史的出来事」であり、下請事業者にとっては千載一遇のチャンスなのだ。
「生きているうちに・・・」の言葉を反芻しながら、下請適正取引推進活動の目的について、弊社メンバーとディスカッションをした。この活動によって下請事業者に何がもたらされるのか? 安定していた仕事を奪うことにならないか? 本当に人を幸せにするのか?
我々の結論はこうである。「下請取引が改善されることにより、下請事業者は必要な運転資金を確保し、従業員の給料を上げ、明るい未来を描ける安定したワークライフを提供できるようになる」
2009年の創業以来、日本経済の再生・成長を支えるグローバル・インフラ機能となることを志し、経済成長を支える企業1社1社の本質的な改善に貢献することを行動指針としている事業革新パートナーズとしては、2018年度は一層、本活動に注力していく考えである。下請事業者の皆様には取引改善を”実感”していただき、明るい未来を描いていただけるよう、我々もフットワークを軽くして取組を進めていきたい。 <以上>
※追記:2018年3月6日、(一社)東京都金属プレス工業会にて「下請取引適正化シンポジウム」が開催されました。経済産業省 製造産業局素形材産業室、経済産業省 関東経済産業局の代表者の方々によるご講演に次ぎ、弊社代表・茄子川も登壇させていただきました。